この歌は、終わってしまった恋への未練と、それでも相手を想い続けてしまう切ない心情を描いています。主人公は、たとえ報われないと分かっていても、相手との繋がりを求め、初めて抱いた特別な感情に囚われています。会うことが困難になり、口約束ばかりになってしまった状況でも、「それでもいい」と相手を許容しようとする健気さが痛々しいほど伝わってきます。しかし、時間が経つにつれ、相手は会うことさえ拒むようになり、主人公は一人苦悩を深めていきます。「あの時 私 忘れたらよかったの?」という問いかけは、忘れられないほどの強い想いと、それゆえの苦しみを示唆しています。それでも、流れる涙は、相手への気持ちが嘘ではないこと、そして忘れられない存在であることを物語っています。
モチーフ:「匂い」が示す記憶と感情の深さ
歌詞の中で強く印象に残るモチーフの一つが「匂い」という言葉です。サビの部分で「恐いくらい覚えているの あなたの匂いや しぐさや 全てを」と繰り返されるこの感覚的な記憶は、単なる過去の出来事の想起に留まりません。匂いは、視覚や聴覚といった他の感覚よりも、より直接的に感情や記憶と結びついていると言われています。それは、理性ではなく、本能的なレベルで過去の感情を呼び覚ますトリガーとなり得るのです。
この歌において、「あなたの匂い」は、主人公が相手との時間を鮮明に、そして感情豊かに思い出すための重要な鍵となっています。それは、楽しかった日々、触れ合った時の温もり、共に過ごした空間の空気感など、言葉では表現しきれない二人の間の特別な何かを象徴しているのではないでしょうか。別れてしまった今でも、その匂いを思い出すことで、主人公はまるで相手がすぐそばにいるかのような感覚に陥り、忘れようとしても忘れられない、深い愛情と未練の念に苛まれるのです。「おかしいでしょう? そう言って笑ってよ」という言葉には、そんな自分の状態に対する自嘲と、それでも拭いきれない想いが滲み出ています。
また、匂いは目に見えないものであるが故に、記憶の中で美化されたり、あるいは鮮明さを増したりする性質を持つことがあります。主人公にとっての「あなたの匂い」は、美しかった過去の象徴であり、失われた時間への郷愁の念を掻き立てるものなのかもしれません。それは、触れることのできない幻影でありながら、主人公の心を強く捉え続ける、切ない愛の証なのです。
肯定的なニュアンスの単語
- いい
- 好き
- 会いたい
- 覚えている
- 全て
- 本気
- 思って
- 知った
- 捧げた
否定的なニュアンスの単語
- 戻れない
- 出来なくなって
- 口約束
- 叶いもしない
- 儚い
- 拒んできて
- 忘れたら
- 涙
- 嘘
- 恐い
- 別れている
- 苦しい
- 悲しい
- 忠わなかった
- 忘れられぬ
歌詞に沿ったストーリー
それでもいいと思えた恋だったけれど、もう戻れないと知っていても、あなたに会いたいと願う日々。たまにしか会う事出来なくなって、口約束ばかり。叶いもしないと分かっていても、あなたを好きになるという儚い願いを抱き続ける。いつしかあなたは会う事さえ拒んできて、一人になると「あの時、私、忘れたらよかったの?」と考えてしまう。でも、この涙が答えでしょう?心に嘘はつけない。恐いくらい覚えているの、あなたの匂いやしぐさや全てを。別れているのに、あなたのことばかり考えてしまう。恋がこんなに苦しいなんて、こんなに悲しいなんて、本気であなたを思って知った。あなたは私の中の忘れられぬ人、全て捧げた人。もう二度と戻れなくても、今はただあなた…あなたのことばかり。
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